こはる
村上春樹さんの小説と切っても切り離せないものといえば【音楽】ですよね!
私の好きな【国境の南太陽の西】にもいくつかの忘れられない音楽が登場します。
村上春樹さんの作品の熱心な読者なら、小説の中に登場する音楽にも興味を持ち次第に村上春樹さんの音楽の世界に引き込まれているのではないでしょうか?
村上春樹さんの作品に登場する曲で最も有名なのは、小説のタイトルにもなったこの曲ですね。
メディアには全くと言っていいほど登場しないことで有名な村上春樹さんですが、なんと8月5日放送された【村上RADIO】でDJを務めました。
実は、村上さんがテレビやラジオに出演するのは初!!
20年以上村上春樹さんのファンを自称している私もびっくりして思わず叫びました!
村上春樹さんは「自分の文章の先生は音楽」と語っています。
村上春樹さん自ら選曲し村上さんの肉声が電波に流れる貴重なラジオ番組。
村上春樹さんが『村上RADIO』の放送でセレクトした曲、35年続けているマラソンにと音楽とのエピソードについてお伝えします!
走りながら聴くのに最適な音楽の条件
村上春樹さんと言えば、走る作家。
毎日朝早く起きて、執筆稼働をした後にジョギングをするのが日課だと言う話はとても有名です。
フルマラソンはすでに35年以上続けておられます。
"僕が墓碑銘に刻んでもらいたいと思っている文句をご存知でしょうか。「少なくとも最後まで歩かなかった」。墓石にはそう刻んでもらいたい。"【夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです】
— 村上春樹名言bot (@muraharu_meigen) 2013年2月7日
マラソンをテーマにした本も出版されていますね。
村上春樹さんとジョギングと音楽
村上春樹さんはジョギングする時にはいつもipodで音楽を聴いているの出そう。
iPodに入っている曲はなんと1000~2000曲!
しかも7台のiPodを持っているとのことなので1万曲以上の音楽データを持っているんですね!
村上RADIOでは、村上さんのiPodから実際に村上さんが選曲した曲が放送で流れました。
村上さんがジョギングのお伴に求める音楽は次の条件を満たした曲だそう。
- 難解な音楽でないこと
- メロディーが口ずさめるような曲であること
- 勇気をもらえるような曲であること
作家が走るということはバカにされることだった?
村上春樹さんが走り始めた35年前には、作家で走っている人は皆無だっそうです。
むしろ、作家が走っているとバカにされたんだとか。
でも、最近では多くの作家が村上さんのように走っているみたいですね。
村上春樹が村上ラジオでかけた曲まとめ!
村上春樹さんが村上RADIOでかけた曲をご紹介します!
あなたが知っている曲がラジオから流れてきたかも・・!
マディソン・タイム(ドナルド・フェイゲン)
村上春樹さんが実際に走っているときに聴いているiPodからの選曲で1曲目に選ばれたのは、ドナルド・フェイゲンのMadison Time(マディソンタイム)です。
ジャズ・ピアニストのレイ・ブライアントの作曲で、1960年ぐらいにヒットした曲です。
今から60年も前の曲なんですね。
レイ・ブライアントは正統的なジャズ・ピアニストとして知られます。
10代の頃から熱心にジャズを聴いてきた村上さんらしい選曲ですね。
肩の力が抜けていて、グルーヴィーなところが選曲の理由のようです。
ハイ・ホー、口笛吹いて働こう(ブライアン・ウィルソン)
村上さんが2曲目に選んだのはディスニーの『白雪姫』に出てくる曲、ハイ・ホー、口笛吹いて働こうです。
この曲はブライアン・ウィルソンがディズニー関連の曲を集めたアルバムの中の一曲です。
3つの曲が一緒になっていて、一曲目がこのYO₋HO(ディズニーランドのカリブの海賊のテーマソング)それからHeigh-HoとWhistle While You Work(口笛吹いて働こう)です。
ブライアン・ウィルソンがディズニー関連の曲を集めたアルバムを発表した時、なんでブライアンがディズニーの曲集を出すの?と首をかしげた村上さん。
実は、ウィルソン三兄弟が生れ育ったのはカリフォルニア州のホーソンという街で、ディズニーランドがあるアナハイムの近く。
子どものころのディズニ―ランドの楽しい思い出が背景にあるのかもしれませんね。
サーフィンUSA(ビーチ・ボーイズ)
村上春樹さんと言えば、ビーチボーイズの印象が強いです。
サーフィンUSAは村上さんが初めて聴いたビーチボーイズの曲。
著書でも、”SURFIN”という言葉のひびきは、14歳の僕にとってものすごく異国的で魅惑的だった、と語っています。
14歳の村上さんはビーチボーイズのサーフィン・ミュージックというコンセプトにしびれ、あれからほとんどしびれっぱなしなんだけどとラジオでもお話されていました。
サーフィンUSAはきっと誰もが聴いたことのある名曲です。
むらかみさんはウィルソン三兄弟のうち、ブライアンだけが生き残ってこうして熱心に演奏活動をしているというのはちょっと信じられないのだそう。
村上さんいわく、ブライアンは天才肌で、超センシティブな人。
現実の世界とはうまく折り合いをつけていけないタイプのいわば天才です。
そういう人が生き残るって、すごく不思議、、人生ってわからない、本当に、、と語っています。
D・B・ブルース(キング・プレジャー)
キング・プレジャーは「王様の喜び」という意味。
もちおん芸名です。
本名はクラレンス・ビークスで、村上さん曰くかなり田舎くさい名前です。
本名では絶対に芽が出ないと考えて、ド派手な名前をつけたのだそう。
ジャズ・テナーのレジェンド、レスター・ヤングが1945年に発表した「DBブルーズ」というブルーズ曲に歌詞をつけて歌っています。
DBというのは、陸軍刑務所(Disciplinary Barracks)をいみします。
ヤングは実際に麻薬所持の罪で1年間陸軍刑務所にぶち込まれていたのだそう・・・!
陸軍刑務所に収監されていたことはヤングにとってとても過酷な体験だったようで、それが彼の人生や人柄をずいぶん変えてしまったようです。
スカイ・パイロット(E・バードン&ジ・アニマルズ)
続いて村上さんが選んだ曲は1968年のヒット曲Sky Pilot。
ベトナム戦争の頃で、ラジオからこの曲が聴こえてくると空気がひりひりするような、独特の皮膚感触があったそうです。
スカイパイロットは途中で「汝殺すなかれ」というメッセージが入っている反戦歌。
当時アメリカのラジオでは政治的な理由からあまりかけてもらえなかったようです。
演奏時間が7分23秒と長くて当時のシングル盤には片面には入り切らずA面B面に分けて入っていた曲です。
そのため、DJが自分でレコードをひっくりかえす空白の時間が入るのですが、村上さんはその空白が好きなのだそう。
ランニングしながらももちろん、車を運転しながら聴くのが好きだと語っていました。
村上さんの理想は、オープンカーで天気のいい日に屋根を開けて、スカイパイロットを聴いて歌いながら運転すること。
この素晴らしき世界(ジョーイ・ラモーン)
ルイ・アームストロングがオリジナルのWhat a Wonderful World(この素晴らしき世界)
洋楽にくわしくなくても誰もが聴いたことのある名曲です。
ジョイ・ラモーンが歌うこの素晴らしき世界は1968年のヒット曲。
この曲はバラードで切々と歌いあげる曲なんですが、ジョイ・ラモーンはアップテンポのリズムで歌っています。
絶体絶命(ジョージ・ハリスン)
ジョージ・ハリスンのBetween the Devil and the Deep Blue Sea(悪魔と深く青い海)
1932年にハロルド・アーレンがつくった古いスタンダードソングです。
なぜ邦題が【絶対絶命】なのかというと、「between the devil and the deep blue sea」は「絶体絶命」とか「進退窮まる」という英語の慣用句だからなのです。
イギリスの作家テレンス・ラティガンが「深く青い海」という戯曲を書いていて、村上さんは18歳くらいの時にこの戯曲を読んですごく心を打たれたのだそう。
若い女性が「前から悪魔が迫ってきて、後ろの崖の下に深い海が広がっていたら、自分は深く青い海を選ぶ」と言って自殺をはかります。
その戯曲をすごく好きになって、同じタイトルの【絶体絶命】を良く聴くようになったそう。
ジョージ・ハリスンはこの曲を2002年の遺作アルバムの中で歌っています。
走る時にとても気持ちのよい曲です。
天国への扉(ベン・シドラン)
天国への扉は、ちょっとゆっくり休憩しながら走る感じの曲として紹介されました。
村上さんとベン・シドランとはコペンハーゲンのジャズクラブで出会い交流があるそうです。
カフェ・モンマルトルという古いジャズクラブが二人の出会いの場所。
ベン・シドランがライブに出ているというので聴きに行った村上さん。
ベン・シドランも村上さんのことを知っていて、休憩時間に二人でずっと話していたら趣味が合うことがわかって仲良しになったそうです。
ベン・シドランが後で日本まで送ってきてくれたCDの中の一枚がボブ・ディランの曲を集めた「Dylan Different」
村上さんは「Dylan Different」の中の曲で、このKnockin’ On Heaven’s Doorが一番気に入っているのだそう。
ラブ・トレイン(ホール&オーツ)
村上さんは続いて、オージェイズのヒット曲Love Trainをホール&オーツがカバーしたバージョンを選曲しました。
ラブ・トレインは1989年公開の映画「ボクの彼女は地球人」挿入曲です。
原題はEarth Girls Are Easy・・つまり訳すと「地球人の女の子はすぐにやらせてくれる」
ひどい題ですよね(笑)
ライト・マイ・ファイア(ドアーズ)
続いて村上さんが選曲したのは、ドアーズのLight My Fire。
村上さんと言えばヤクルトスワローズのファンであることでも有名です。
実は、小説家・村上春樹さんを生んだのは2017年になくなったのデーブ・ヒルトン氏だと言われています。
1978年4月1日(今から40年前)村上さんは神宮球場の外野席ででヤクルト―広島戦を観戦していました。
一回裏に先頭打者のヒルトンが二塁打を放ち晴れた空に響いた快音を聞いた時【空から何かが静かに舞い降りてきて、そうだ、小説を書いてみよう】と思い立ったのだそう。
そんな村上さんがもしも野球選手で神宮球場に出るとしたら、テーマはこのLight My Fire。
絶対にこの曲をかけると決めているそうです。
村上春樹がラジオDJに!【村上RADIO】の選曲まとめ!ランニングしながら聴く曲は?まとめ
あの村上春樹さんが日本のラジオ番組のDJになるなんて・・!
村上さんの熱心な読者はきっと誰もが信じられなかったことでしょう。
「村上RADIO」を聴いて思ったのは、村上春樹という人は、作家の神秘性みたいなものをプレゼンテーションしていくと同時に守ることに、おそらく非常に慎重に取り組み、そしてかなりうまくやり抜いたのだなあということでした。この時代に、声の印象だけで読者をこれだけ騒がせるってそうそうできない。
— 栗原裕一郎 (@y_kurihara) 2018年8月5日
2018年の夏の一夜限りのラジオでしたが、、ぜひまたラジオに登場してほしいですね。
村上春樹さんの小説に登場してくる曲をもっと知りたい!という方にはこちらの本がおすすめです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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